山の音

ひっそりと復活しました。

腐朽菌と共生微生物(腐朽菌編)

復帰一発目を飾るのは腐朽菌と共生微生物についてです。
うまくまとまってないかもしれないので、また追加でいろいろ書いたりするかもしれません。
また、記事が長くなるので2つに分けて更新したいと思っています。




クワガタにしろカブトムシにしろ、木材が腐朽した腐植質を食べていることに変わりはありません。
そして、自然界の木材腐朽菌はざっくり分けると3つに分類され、
・白色腐朽菌
・褐色腐朽菌
・軟腐朽菌
と分けられます。
白色腐朽菌は菌糸ビンなどで使われるキノコのほとんどが含まれます。
木材を腐朽させる過程でリグニンを分解するため、残留したヘミセルロース、セルロースによって色味が白くなります。
褐色腐朽菌は針葉樹でよく見られ、セルロース、ヘミセルロースを分解するためにリグニンの褐色が残ります。
これがいわゆる赤枯れでネブトやマルバネなどの飼育困難種に使われていますね。
軟腐朽菌はヘミセルロースを主に分解しますが、腐朽の際に木材を柔らかく変化させます。(軟腐朽)
黒枯れと言うこともありますね。
日本国内のブナ・ミズナラが優先する温帯林においては白色腐朽菌が圧倒的に多くみられ、
木材の腐朽型を調べたところ、
白色腐朽型 76.4%
褐色腐朽型 29.9%
軟腐朽型 8.2%
となっています。

菌糸ビンによる飼育ではヒラタケ、オオヒラタケ、カワラタケなどの白色腐朽菌が使われていますが、
全てのクワガタが白色腐朽型の木材を好むわけではなく、種によって好む腐朽型が異なっています。
日本で見られる種で例を挙げてみると、
白色腐朽型選好性
・アカアシクワガタ
・ヒメオオクワガタ
・ルリクワガタ
・ノコギリクワガタ
褐色腐朽型選好性
・ツヤハダクワガタ
・マダラクワガタ
軟腐朽型選好性
・コルリクワガタ
選好性が弱い種(一般に白色腐朽への選好性の方が強い)
・コクワガタ
・スジクワガタ
・オニクワガタ

オオクワガタ、ヒラタクワガタは白色腐朽を好みますが、コクワガタの例を考えると褐色腐朽の環境下でも生育可能と考えられます。
また、後述しますがネブトクワガタ、マルバネクワガタは少し特殊な環境を好みます。

腐朽の状態によってもクワガタの選好性は大きく変わり、
ツヤハダクワガタが生息している褐色腐朽材を調べるとほぼ全てが腐朽の進んだ木材であることがわかります。
反面、オニクワガタやコクワガタの生息している白色腐朽材は腐朽の浅い木材ものも多く、腐朽の進行状態は褐色腐朽材よりもシビアではないことがわかります。(種の間でも違いがあるので一概には言えません)
これは褐色腐朽材の特徴に原因があり、
褐色腐朽の初期段階では木材中にシュウ酸が蓄積しpHが低下するため、クワガタが利用しづらい環境になるためと考えられます。
また、白色腐朽材と褐色腐朽材のC/N比を比べてみると、※C/N比については黒点の抑止でいろいろ書いてます。
腐朽材はいずれも未腐朽材より低いC/N比を示しますが、
褐色腐朽材のほうが炭素所有量が多く、C/N比が高くなっています。
クワガタ・カブトは窒素所有率の高い餌を与えるとよく成長するため、
C/N比がある程度低い方がよく成長するということになります。
そのためクワガタの幼虫は木材中の坑道トンネルで木くずと糞を混ぜ合わせて再び摂食するという行動をとります。
これは糞中に含まれる窒素化合物を再び取り込むことで窒素分の再利用をしているのです。
そのためトンネル内の木くずのC/N比は周辺の腐朽材よりも30程度低くなっています。

糖質の利用も幼虫の成長に重要な要素です。
しかし、クワガタは木材を構成する多糖類を消化することは出来ないので単糖類をいかに吸収できるかが決め手となります。
白色腐朽材は褐色腐朽材と比べ総量で2倍以上の単糖類を所有しており、
中でもグルコースとキシロース所有量の差が大きくなっています。

このように、白色腐朽材と褐色腐朽材では圧倒的に白色腐朽材が有利であることがうかがえます。
ならばなぜ褐色腐朽材を利用する種がいるのでしょうか?
実は代謝能力に差があるのです。
コクワガタとツヤハダクワガタを比較すると、
糖類の消化吸収比率を見るとコクワガタは平均35.8%なのに対し、ツヤハダクワガタは平均9.1%しかありません。
また、炭素分、窒素分の消化吸収能力も低く、キシロースの利用能力が低いと考えられます。
多量のキシロースが成長を阻害する物質として働くのではないかと考えられます。
つまり、褐色腐朽材を利用する種は白色腐朽材を消化しきることができないために利用できないのです。
白色腐朽菌を利用する種はより効率よく養分を取り入れるべく進化した種であると言えます。

ここで、赤枯れ材がよく使われているネブトクワガタやマルバネクワガタの食性も見てみると、
ネブトクワガタは腐朽材中に営巣したシロアリ類の巣壁や坑道中の粘度質の腐食物を摂食しています。
一方、マルバネクワガタは大径木の洞などに溜まった泥状腐食物を食しています。
これらの腐食物は周辺材と比較して炭素所有量が減少している一方、窒素所有量の有意な増加によって低いC/N比が示されています。
また、ネブトクワガタの餌周辺の材部の炭素・窒素所有景は褐色腐朽材とほぼ同じですが、
マルバネクワガタの餌はより窒素所有量が高くなっています。
つまりネブトクワガタはやや褐色腐朽型選好性に近く、
マルバネクワガタはさらに低いC/N比に適した食性であると言えます。
これらの種に他のクワガタの使用済みマットや食いカスがいいと言われるのも、
ネブトクワガタにおいては糖類の減少により消化しやすくなったことが、
マルバネクワガタにおいては糞による窒素分の増加によって本来摂食する腐植質にC/N比が近づいたことが挙げられるでしょう。
マルバネクワガタの生息している腐植質は褐色腐朽の最終段階に近い状態であり、木材が土に分解される過程でより土に近いものを好むことになります。
これらのことを鑑みると、ネブト、マルバネは褐色腐朽型選好性の種同等、あるいはそれ以上に糖類の代謝能力、耐性が低く、
養分の消化吸収能力が低いと考えられます。
ここでミトコンドリアDNAから見たクワガタの系統樹と食性を比べてみると、

Stag_beetles_phylogenetic_tree.jpg

この系統樹に従って考えれば、クワガタムシ科の原始的な食性は褐色腐朽材であったことがうかがえます。
そこから軟腐朽材食性に適応したのがルリクワガタです。
そして、現在飼育されている多くの種が、
より高い養分と安定した住環境を求めるべく白色腐朽材食性を獲得した種であることがわかります。
中でもチビクワガタは社会性と窒素分の補給のために肉食性を獲得しました。
ネブト、マルバネは消化管を進化させる代わりに、シロアリ等の他の分解者の環境で生息することでよりこなれた木材を食する道を選んだと言えます。
反面、ドルクス等は糖分の利用等を確立し、一部の種では褐色腐朽材への適応を完全になくしてしまったものもいます。
こうした進化の過程を見るとそれぞれの種に適した飼育環境を考えることは必然であると言えるでしょう。 




今回の記事はあまり飼育に関係なかったかもしれませんね。
それにうまくまとまってない気がします。
しかし、こういった腐朽材とそれぞれの種との相関を知ることは後々の飼育に大きく働くかも……?(好意的解釈)
次の記事は飼育に対し生かせる点が強いと思われる微生物についてです。
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