山の音

ひっそりと復活しました。

黒点の抑止

幼虫飼育の際、しばしば起こるのが黒点の発生。
私の環境でも過去しばしば発生しては幼虫が死んでしまいました。
発生の度合いと場所によっては無事に羽化する場合もありますが、やはり発生しないに越したことはないでしょう。

そこで、いろいろと調べてみた結果、「C/N比」が関わっているのでは?という仮説を立てました。

C/N比とは、有機物などに含まれている炭素(C)量と窒素(N)量の比率(質量比)のことですが、
おがくずは樹種にもよりますが数百~1000前後と非常に高い数値を示しています。
(C/N比は低いほど窒素の占める割合が大きい)
一般に畑地土壌の培地はC/N比が20以下となっています。
C/N比が20を上回ると土壌中の窒素が微生物に取り込まれる「有機化」が起こります。
反対に下回ると微生物から窒素が放出される「無機化」が起こります。

マットは微生物の影響をダイレクトに受けるために、C/N比による窒素の移動は見逃すことができない要素であると考えます。

カブトムシはC/N比10~100前後が可食の範囲であると思われ、クワガタの場合はもう少し幅広いC/N比でも飼育可能です。
そしてこの範囲内の中でも30~80程度のC/N比が最もよく成長する範囲だと思います。
クワガタやカブトムシは腸内に窒素固定能を持つ菌を共生させていますが、
これはマット内で有機化が起こっているために、腸内の菌に窒素分を取り込ませることで養分を補っていると考えられます。
幼虫の腸内はアルカリ性に保たれ、窒素固定菌が活動しやすい状態となっている点も見逃せません。

上記の菌の活動によって、飼育しているマットは徐々に窒素分が補給されC/N比は低くなっていきます。
(カブトムシの糞が肥料になるのはこのためでしょう)
C/N比が低くなると土壌の養分(タンパク質などの窒素化合物)は増加し、それにしたがって土壌の微生物の増殖も旺盛になります。
しかし、微生物が増殖するにつれて炭素分が不足してしまいます。
すると必然的に微生物は死んでしまうのですが……。
この時、死ぬ微生物のほとんどは幼虫にとって有益なものばかりなのです。
と言うのも、悪性な菌の多くは窒素化合物中から炭素分を合成し、自らの養分とすることができますが、
良性の菌の多くはそれができないのです。
そして炭素分が合成される際に窒素が放出され、よりC/N比が低くなってしまいます。

さらに、好気性の微生物が活動するには酸素が必要ですが、
マット中の酸素量はどうしても低くなってしまいます。
そこで炭水化物や窒素化合物から酸素を利用しますが、
その際に残ってしまうのが炭化水素です。

こうしてマット中に残った窒素と炭化水素、また酸素などが結びつくことによってマットが極端な酸性に偏ったり、
有害な物質が発生してしまうのです。
ヘドロ化したマットが酸っぱい臭いを発しているのは飼育していれば一度は嗅いだことがあるのではないでしょうか。

上記の理由で悪性の菌が繁殖し、極端な酸性に偏った培地を食することで幼虫の腸内フローラが乱れて抵抗力が弱まってしまい、そこに活性を低くする何らかの要因が絡むことで黒点が発生する……。
と言うのが私の仮説です。
通常の土壌は弱酸性になっていますが、極端な酸性の土壌を食べ続けることで腸内をアルカリ性に保てなくなり、養分の摂取がうまく行えなくなるのでしょう。

原因としては、タンパク質等の過剰な添加、その他にはマットの再利用などが挙げられます。

タンパク質は低C/N比であり、上記の微生物の異常発生を引き起こしやすくなります。
また、上述のように通常の飼育を行っていてもマットのC/N比は低くなっていきます。
このマットの再利用は悪性菌の温床となる危険性があります。

改善法としては、炭素分の添加が挙げられます。
たとえば、米ぬかや藁、竹や糖分が良いでしょう。
中でも竹がベストだと思われます。
糖分は純粋な炭水化物ではありますが、分解されやすく根本的な解決にはならない場合があるためです。
従って竹マットの添加は一定の効果を見込めると思います。

一般にはおが粉に10~20%程度、発酵させる場合はさらに+5%程度のフスマ・米ぬか等を添加するとC/N比は30~40程度になります。
過剰な添加を謳っている商品には気を付けた方が良いかもしれません。

菌床飼育の場合、菌糸が伸長するための最適なC/N比は20前後と言われていますが、
菌糸ビンに使用される白色腐朽菌は養分を他の菌に使われぬようガードしながら生長するため、
窒素量が多少高くとも上記の問題は起こりにくいと言えます。
黒点を生ずる個体がマット飼育に多いのはこのためでしょう。
しかし、菌糸自体のC/N比は低いために、廃菌床には注意した方が良いと思います。

また、C/N比を調べるうちに、炭素分の添加はダニ・センチュウ・コバエの防除にも有効であることが分かりました。
ダニ・センチュウ等が発生するC/N比は15~20程度であり、コバエもそれに準じます。
よって、ダニ等が発生したマットは幼虫飼育にとってレッドゾーンに入ったことを示すバロメーターと考えることができます。
コバエが発生したマットは育たないというのも、コバエが直接の原因ではなくC/N比が低くなったことによる成長不良が大元にあると思われます。
このようなマットに炭素分を添加することで発生を抑えることができました。
雑虫が発生しているマットのC/N比は20%以下になっていると考えられますから、
炭素分を10%程度すきこむと効果的であると思われます。

これはゴライアス等の飼育につきもののダニを抑制することにも役立ちそうです。
また幼虫の成長にも関わりますのでサイズを上げたい時は意識していきたいですね。
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Comment

らん  

黒点に関してここまで深く書かれているものは初めて見ました。さすがです^^

そして自分では考え付かないことだらけで、読みながら「なるほどー・・・」と読ませてもらいました。

その中で家の飼育方法でマットの再利用が引っ掛かりました^^;マット交換時に半分再利用することで幼虫が落ち着くかと思ったのが裏目に出ましたね。私のところで起こっている黒点は、もしかしたらマットが原因と考えるより、自分の飼育方法に原因があるのかも?見直したほうが良さそうです。

改善策は竹マットですか・・・ゴロファspの産卵に竹マットを使用したいと思って探したけど近所で見つからなかったんだよなー^^;

2014/01/23 (Thu) 17:57 | EDIT | REPLY |  

右利き  

こんばんわ

さっそくまとめてくれましたね。

外国のカブトに多発するのは日本のカブトに比べて
腐葉土より朽木を好む習性があるのでC/N比ってのが低い状態に適してないんですかね?
家でコーカサスには多発してネプチューンに全く黒点がないのはそこら辺も関係ありそうです。

2014/01/23 (Thu) 19:22 | EDIT | REPLY |  

こえだ  

Re: タイトルなし

らんさん

マットの再利用はバクテリアの引継ぎなど有効な面も確かにあるのですが、
場合によっては悪影響を与えることがありますね。
マットの状態を見て判断することが必要なのでしょう。

竹マットは置いているところが少ないですねー。
私の知っているショップでは
大阪のCOLO●Sさんか、同じく大阪のフロムス●ラッチさんなんかがパッと浮かびますね。
他にもヤフオクなんかで出品されていることがありますね。
入手困難ですが、やはり効果は大きいです。

2014/01/23 (Thu) 23:03 | EDIT | REPLY |  

こえだ  

Re: こんばんわ

右利きさん

種によって適したC/N比や、好む食性がありますので、
黒点の発生のしやすさは違いが生じますね。

コーカサスは現地では朽木の中にいることも多いようですから、
特にC/N比の変化に弱い種なのかもしれません。
土化したマットを好む種はC/N比が低くても適してくれると思います。

食性からある程度の区分はできますから、
それを元にマットの調整を行うと上手くいくでしょうね。

2014/01/23 (Thu) 23:11 | EDIT | REPLY |  

かっき  

黒点?

黒点病あるいは、
黒斑病とも呼ばれているみたいですね。
ウイルス説もあるみたいですが、
C/N比(初めてお聞きしました)が、
関与していたのですね。
私は経験した事はありませんが、
注意して飼育して行きたいと思います。
いつも、興味深い記事ありがとうございま~す。

2014/01/25 (Sat) 12:19 | EDIT | REPLY |  

こえだ  

Re: 黒点?

かっきさん

この記事に書いたことはあくまで仮説ですが、C/N比は幼虫の成長にも深くかかわっている予感がします。
さらなるサイズアップの為にはC/N比を意識することが必要かもしれません。

黒点が発生した個体は成長も悪くなるので、注意して飼育しましょう!

2014/01/25 (Sat) 12:51 | EDIT | REPLY |  

knarahara0811  

初めまして!

色々なクワカブブログを見ていてたどり着きました。
凄い知識量ですね、、、驚きです!
独学で習得されたのですか?

国点病については当方も研究しており、メタリジウム菌が原因では?と仮説・検証を繰り返しております。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0%E8%8F%8C

私とは異なるアプローチをされており、とても興味深く拝読しました。

当方のブログです

http://ameblo.jp/onegai-twins0811/

ぜひ、お立ち寄りください!

2014/04/10 (Thu) 16:32 | EDIT | REPLY |  

こえだ  

Re: 初めまして!

Knarahara0811さん

初めまして!

早速ブログを拝見しましたが、とても興味深い内容でした!
これからも是非よろしくお願いします。

私の書く内容ですが、あくまでも個人的に調べたものに過ぎないので話半分に聞いてもらえると……。笑

黒点ですが、メタリジウム菌というまた違ったアプローチで調べておられるのですね。
この菌は生物農薬として利用が進められているようですが、
同様の症状を示すボーべリア菌等の被害はよく知られていますね。
これらの菌はトビムシが好んで食します。
菌床飼育をしているとしばしば発生しますが、
それらをマットに移して検証してみると面白いかもしれません。
その状態で黒点が発生すれば菌による被害の可能性は低いと思われます。

2014/04/11 (Fri) 07:15 | EDIT | REPLY |  

Knarahara0811  

こんにちは!

こえださんの記事、凄いですよ。
話半分というレベルではないです。

当方、ブリードルームとは別に実験室(笑)があり、カビの培養・黒点が出たマットの成分分析などやっております。

メタリジウム菌もあくまで仮説の域をでません。
C/N比についてももっと勉強せねば、、、と思いました。

ブヨブヨ病の記事もぜひアップしてください!

当方のブログにもぜひ遊びにいらしてください。
コメ数が少なくてさびしいですので(笑)

2014/04/11 (Fri) 13:04 | EDIT | REPLY |  

こえだ  

Re: こんにちは!

Knarahara0811さん

そんなに高い評価をいただくと照れくさいですね笑

今後も面白い記事をあげられるようにがんばります!
そちらのブログにも遊びに行きます!
よろしくおねがいします。

2014/04/14 (Mon) 13:09 | EDIT | REPLY |  

Knarahara0811  

おはようございます!

幼虫の成長についてですが、当方の場合、

・温度を20度以下に維持し、20度を長期間超えないと脱皮しないという性質を最大限利用します。

・ストレスフリーにするため、飼育ケースの完全遮光・振動ゼロなどに気を配っています。(ストレスを感じると早期脱皮を促進してしまいますので)

・セルロース・キチンなどを適量摂取させるようにする(脱皮時の外皮形成のため、これらの量が少ないと幼虫が加齢の祭の大きさに自分自身でリミッターをかけてしまいます)

・クワガタに関してオオヒラ菌糸は使用しない。
理由はご存じと思いますが、オオヒラは菌勢が強くヘミセルロースを破壊してしまうためです。
3令初期の成長期のみカワラ菌糸使用、他のステージは全てマット飼育です。

2014/04/25 (Fri) 05:40 | EDIT | REPLY |  

knarahara0811  

続きです

一般的なブリード下の幼虫期間の倍の期間をかけ成虫に仕上げます。
例えば、オオクワ・ニジイロ♂等は2年1化させます。(WDと同様の期間)

C/N比の関与は当方も研究しております。

黒点病はこえださんの仮説により、メタリジウム菌が活性化するという流れでほぼ間違いないと思います。

2014/04/25 (Fri) 05:42 | EDIT | REPLY |  

knarahara0811  

続きです

ブヨブヨ病についてです。

飼育者の方なら悲しい経験をされた方も少なからずいらっしゃるでしょう。

属名として、「バチルス・ポピリエ乳化病」・ポピリエ乳化病」と呼ばれます。

バチルス菌

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%B7%E3%83%A9%E3%82%B9%E5%B1%9E

>水中や土壌に普遍的に存在する、非常に多くの種を含む属である。高pHや低温、高塩濃度、高圧といった様々な極限環境にも適応している種も多い。

http://www5.ocn.ne.jp/~minato/shop/bb_top.html

生存(培養・繁殖)温度帯ですが、当方の検証では-10度~120度まで生存が確認できました
北極・南極以外には確実に居ると考えられます。

2014/04/25 (Fri) 05:45 | EDIT | REPLY |  

knarahara0811  

続きです

非常に生命力が強く、黒点病のメタリジウム菌の比ではありません。

また、菌勢・侵食力も強く、罹患してしまうと、100%☆になります。

宿主としてコガネムシを選ぶことが圧倒的に多いのですが、その毒素パワーから農薬として害虫駆除のために使用されるほどです。

【対策】
・マットを超低温(-50度以下)にて一定期間にて保存する。
http://www.thermo-magic.com/index.html
マイナス80度の機会で70万円ですか、、、
これだけの予算があればウエストウッディ成虫ペアが買えます(笑)

北海道のブリーダー様(旭川などの北部の方)にお願いする手もありますね。

・マットを「無酸素状態」にする
てっとり早いのは真空パックでしょう
での程度効果があるか怪しいですが、、、

無酸素生成装置という機械があります
JAXA,NASA,東大・京大などの研究室にありますが、値段がべらぼうに高く、かつ、個人が買うことはまずできません。

一番の問題はこれらの手段を実行した場合、共生菌・バクテリアなども全て死滅してしまいます。

2014/04/25 (Fri) 05:47 | EDIT | REPLY |  

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